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女性管理職 どう増やす?

男女平等 日本は101位」
目標設定や育成支援/企業は知恵絞る

世界経済フォーラムの「男女格差指数」によれば、日本の平等度は135ヵ国中101位。先進国で異例の低さだ。大きな要因が、経済分野での女性の地位。役員に占める女性の割合はわずか1%、管理職も10%強に過ぎない。裾野を広げ、女性の活躍を進めるにはどうすればいいのか。先進的に取り組む企業の例をみてみよう。

「中国で働いていた時、本社の指示で動くもどかしさを感じていた。自分の意見が生かせるポジションに就きたいと願っていました」。日産自動車中国事業部の張異岫さん(39)は、今年4月にマーケティング&セールス課長に就任した。
1995年に天津の南開大学を卒業して、主に日系企業で働いた。その後、京都大学大学院の修士コースで学び、2004年に日産自動車に入社した。部下6人の半分は中国出身、5人が女性だ。「部下の希望と会社の期待の間で悩む毎日ですが、提案を現地で受け入れられ感謝されると嬉しい」。管理職としての達成感もある。
「まさか自分が管理職になれるなんて、考えたこともなかった」。こう話すのは三菱東京UFJ銀行国分寺店のお客さま相談第二課課長・鈴木愛さん(36)だ。96年に短期大学を卒業して入行。支店の個人窓口や訪問営業で働き、本部の研修部門などを経て、11年4月に課長になった。
3歳半の長女を育てるワーキングマザーでもある。「上司からいろいろと教えられ、将来のキャリアを考えるようになった。人を動かすことは大変だが、部下が成長してくれるのが楽しみ」と話す。子どもを持つ女性課長はまだ少なく、後輩から相談メールが届くこともある。
継続的な活躍重視
こうした女性管理職誕生の背景にあるのは、登用を促す企業の努力だ。日産自動車は経営戦略として国籍や性など人材の多様化(ダイバーシティー)を打ち出し、04年から女性の活用に取り組んでいる。採用はエンジニア部門で15%、非エンジニア部門で50%を女性にするガイドラインを設定。管理職も17年4月に10%の目標を掲げる。
課長級のキャリアアドバイザー2人を配置し、管理職候補の女性とその上司の管理職、人事担当者とともに育成計画をつくり、課題解決のための実践的な講習も行う。04年に1.6%だった女性管理職の比率は12年に6.7%になった。
三菱東京UFJ銀行は、15年3月末までに課長級以上の女性管理職を300人、役付き者比率を15%にするなどの数値目標と実績を社内外に公表している。国井弘美ダイバーシティー推進室長は「重視しているのは数値自体より、女性が継続的に活躍できる仕組みづくり」と話す。
ネットや冊子、セミナーなどで手本となる女性を紹介して意識改革を図り、研修を通じ男性管理職に多様な人材の活用法を伝える。12年度からは、課長相当職になった女性に、支店長や本部の次長級の管理職が経験知を伝えるシニアメンター制度も始めた。
管理職候補育成で成果を上げているのが、あいおいニッセイ同和損害保険だ。昇格推薦者に必ず女性を入れるよう管理職に働きかけ、積極的に研修を受けさせた。主任から課長補佐の女性は、08年の439人から12年には1361人と3倍に増え、全体に占める割合も42.4%になった。
今年は女性の活用が遅れている部門に対して、個別研修も行った。ただし、課長以上の管理職はまだ3.5%。「早くピラミッド形にしたい」と福岡藤乃ダイバーシティ推進室長は言う。11年から女性管理職に役員や本社の部長が指導者として助言するメンター制度も導入した。
トップが強い意志
先進企業に共通するのはトップの意識と危機感だ。女性の活用は、少子高齢化とグローバル化が進展する日本で企業が生き残るための経営戦略。国井室長は「この2年で潮目が変わった」と話す。
日産自動車ダイバーシティディベロップメントオフィスの桐竹里佳室長によれば、当初は女性を特別扱いすることに男女双方から反発があったという。だが、現実の数字の低さと明確なトップの意思が改革を後押しした。続けることで理解が進んだ。
「優秀な女性管理職と接し、男性の意識も変わった」「女性管理職が一定数を超えると社内の風土が変わる」。こんな声もある。男性管理職の中には「女性自身が上を目指したがらない」と言う向きもあるが、身近に手本がいれば女性の意識も変わる。思い切った変革が求められている。
企業の取り組み状況 国は情報開示求める
管理職的職業に占める女性の割合が3~4割の欧米先進国に比べて、日本は2011年でわずか11.9%だ。政府は6月に「働く『なでしこ』大作戦」と名付けて、女性の活躍促進を打ち出した。目玉は見える化だ。
厚生労働省は企業トップの方針や女性の活躍状況、取り組みなどを開示するよう働きかけている。内閣府は検討会を開き、上場企業に女性役員の登用状況に関する情報開示を促す報告書をまとめた。
経済同友会も5月に女性の管理職・役員を増やすための行動宣言をまとめた。20年までに女性管理職30%を目指し、情報開示や意識改革を率先して行う。今夏にまずアンケートを行い、課長級以上が4.6%、取締役兼執行役が0.8%などの厳しい結果を発表した。11月からは、参加者の6割が女性の育成プログラムも開始した。
男女雇用均等法施行から四半世紀余り。ようやく本気で女性管理職を増やそうとの機運が芽生えつつある。

日本経済新聞掲載
by sonicont1 | 2013-03-06 15:27 | 経済